研究概要 |
【目的】ING1遺伝子は当初乳癌における癌抑制遺伝子として単離同定されたが、最近、ING1蛋白がhistone acetyltransferases (HATs)とhistone deacetylases (HDACs)に関連したクロマチン・リモデリングに関与していることが示唆された。そこでING1の主要アイソフォームのひとつであるp33ING1bがエトストロゲン・レセプター(ER)αの転写活性に転写共役因子として影響を及ぼすかどうかを検討した。【方法】ERα、p33ING1b遺伝子等の発現ベクターおよびERE-TATAレポーター遺伝子等を、Cos-7、HeLa、GepG2細胞に一過性形質導入した後、24時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。【結果】p33ING1bを一過性形質導入した細胞においてエストロゲン誘導ERα転写活性は濃度依存性に上昇することがわかった。また、この転写活性増強作用はERαのAF2ドメインを介したものであることが観察された。抗エストロゲン剤であるICI182,780とラロキシフェンアナログLY117018はCos-7細胞においてp33ING1bによる転写活性増強作用を著明に抑制するがタモキシフェンの転写活性抑制効果は前2者より弱かった。また、p33ING1b蛋白とERα蛋白は弱いながらも直接結合することが観察された。【まとめ】p33ING1bはERαの転写共役因子として働いており、早期乳癌ではp33ING1bの発現亢進が認められ、p33ING1bが乳癌の発生・進展に関与している可能性が示唆された。また、本結果はp33ING1bがクロマチン・リモデリングの作用を持っているとういう報告を支持するものであった。
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