研究概要 |
T細胞の活性化や免疫寛容の分子生物学的機構が解明され、T細胞の活性化にはTCR/CD3複合体を介した主刺激とCD28などの接着分子を介した副刺激との二つの刺激が必要であり、主刺激のみを加え副刺激を行わないでおくと免疫寛容が誘導されることがわかっている。抗CD3抗体を用いTCR/CD3複合体を刺激した状態で、抗原提示細胞などからの副刺激を行わないでanergyを誘導したマウスのT細胞では、TCR/CD3複合体の主刺激で最初に起こるlck, fynなどのプロテインチロシンキナーゼ(PTK)の発現の動態に変化が起こり、lckの発現が減少しfynのみが増加しPTKの発現量が変化していることが明らかになってきた。長期生着に関わる因子の解析として、長期生着例でのAP-1およびNF-ATの発現の検討(平成5年度文部省科研)を行ってきたが、末梢T細胞のPTKの発現量の変化は腎移植長期生着症例における免疫寛容及びanergyの状態の評価の新しい指標に有効と考えられ、免疫寛容状態を把握し免疫抑制剤の至適投与量の決定する新たな指標の開発と応用を目的とする。 平成14年にヒト末梢リンパ球に発現されるfyn, lckを安定した指標とするためにヒトT細胞白血病のJurkat細胞株を用いた、実験系によるこれらの因子の発現の陽性モデルを確立するように、随時準備中であるが、残念ながら未だ確立にいたっていないが、下記の実験を可及的に実現すべく活動中である。 1)末梢血採血→リンパ球分離培養→核蛋白分離精製→ゲル移動度シフト法→画像解析、AP-1,NF-AT, NF-kB発現強度解析→移植後臨床経過との検討→至適免疫抑制剤投与量を検討 2)末梢血採血→リンパ球分離培養→細胞融解抽出精製→ウエスタンブロット法→画像解析、lck, fyn発現強度解析→移植後臨床経過との検討→至適免疫抑制剤投与量を検討
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