研究概要 |
平成14年度の研究において、TGFβ吸着剤として特定のアミノ基(ジメチルヘキシルアミン)を官能基として固定化した多孔質のポリスチレン系極細繊維を開発,同定し、それを充填した体外循環治療カラム(容積2ml)が、単独療法あるいは化学療法(Gemcitabine)との組み合わせにおいて、担癌ラット(WKAHラットに化学誘発肝細胞癌であるKDH-8細胞を接種して作製)の腫瘍増殖を抑制し生存期間を有意に延長することを明らかにした。 平成15年度の研究においては、新たにヒト癌性胸腹水を用いた吸着実験を行い、同吸着剤がTGFβ以上にVEGF, IL-6を強く吸着除去することを明らかにした。この吸着剤で処理された癌性胸腹水は、未処理癌性胸腹水に比して明らかに癌患者末梢血リンパ球あるいは癌性胸腹水由来リンパ球からのLAK活性誘導に優れ同吸着剤を充填されたカラムが細胞性免疫能の回復(増強)に有用なことを明らかにした。またビーグル犬を用いた大動物実験において本カラムを用いた体外循環治療の安全性を検証した。 近々開始予定の臨床試験においては、先ず進行癌患者を対象として、その単独治療による免疫賦活効果(血中免疫抑制性サイトカインの除去と細胞性免疫能の回復)を確認した後に、膵癌,スキルス胃癌などの難治性固形癌(これらの癌の進展にはTGFβ,VEGFが共に深く関与)を対象疾患とし、化学療法との併用による臨床試験を展開していければと考えている。
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