【目的】臨床ラ島移植発展のためには、拒絶反応の制御のみならず再発の原因である自己免疫反応の克服が重要な課題でとなる。本研究では、バイオ人工膵としてアガロースマイクロカプセル化ラ島を作成して、拒絶反応の起こらない同系移植を行い、バイオ人工膵移植による再発防禦効果が得られるか否かを検討した。 【方法】(1)1型糖尿病モデルであるnon obese diabetic (NOD)マウスをレシピエントとしNODマウスからNODマウスへの移植を行った。(2)NODマウスのラ島を膵管内コラゲナーゼ消化法、デキストラン不連続密度勾配遠心法にて単離し、5%アガロース溶液中に混和、振盪させてバイオ人工膵を作成した。(3)レシピエント腹腔内あるいは大網内に1500〜2000個のマイクロカプセル化ラ島を移植し、裸のラ島を移植した場合と比較した。(4)検討項目は術後血糖値、グラフト生着期間、組織学的評価とした。 【結果】裸のラ島移植群(n=12)では全例2週間以内に糖尿病が再発し、組織学的にも好中球を主体とする著明な浸潤細胞が認められた。一方、マイクロカプセル化ラ島移植群(n=16)では13例(81%)で100日以上正常血糖を維持し、組織学的にβ細胞の形態は良く保たれ、細胞浸潤も認めなかった。さらに、マイクロカプセル間に毛細血管の新生も観察された。 【結論】マウス同系モデルにおいて、マイクロカプセル化バイオ人工膵は、自己免疫反応による傷害を回避し、無免疫抑制下で長期生着することが証明された。
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