1.リアルタイム定量PCR (Rt-PCR)による種々の臓器でのウイルス価の定量、潜伏感染の時期の決定 6週齢のBALB/c雌マウスにマウスCMV (MCMV)を0.2LD50腹腔内に接種し、感染1、2、4週、3ヶ月、6、9、12ヶ月後に肺、脾臓、唾液腺、腎臓を採取し、DNAを抽出し、リアルタイム(Rt)-PCR法(TaqMan法)にてMCMVゲノム量を定量した。Rt-PCRの増幅領域としてはImmediate Early (IE)とした。コピー数の基準には全IE領域を含むプラズミドであるpIEIIIを用いて、検量線を得た。その結果、以下のことを明らかにした。 (1)検出感度は10copies/organであり、従来のPCR法の検出感度の約1000倍であった。 (2)唾液腺でのウイルス価は感染2週後に7.9x10^8とピーク値を示した。その後、唾液腺でのウイルス価は急激に減少し、感染4週目では検出限界以下になっていた。一方、肺では感染1週目に5.9x10^7コピーのMCMVが存在し、その後漸減するものの感染4週目でも8.3x10^4コピーのMCMVが検出された。感染4週目の時点でウイルスが検出された臓器は肺のみであった。その後、肺では感染9ヶ月目までウイルスが検出された。しかし、感染12ヶ月ではウイルスは検出限界以下であった。 2.肺におけるIFN-γ産生細胞及びMHC/抗原ペプチド4量体によるMCMV特異的T細胞の検出 上記よりMCMVの潜伏/持続感染臓器として肺が考えられた。そこで、肺におけるMCMV特異的T細胞の割合を調べる目的で、MCMV (0.2LD50)を腹腔内に接種し、経時的に肺を採取し、浸潤リンパ球を分離した。 (1)肺リンパ球を試験管内で抗CD3抗体で刺激し、IFN-γ産生細胞の割合をフローサイトメトリーにて調べた。その結果、感染0、1、3、6、9ヶ月後におけるリンパ球分画におけるIFN-産生細胞の割合は平均はそれぞれ(n=7-8)0.6%、5.9%、6.8%、9.1%、10.9%であった。 (2)フローサイトメトリーにてこのIFN-産生細胞の表面マーカーを調べたところCD8陽性であった。 (3)既に報告されているMCMVにおけるキラーT細胞のシークエンスを基にMHC (H-2L)/抗原ペプチド4量体を作成した。その結果、上記のIFN-γ産生、CD8陽性細胞はMCMVのIE抗原を認識するキラーT細胞であることがわかった。 3.以上から、平成14年度は以下のことを明らかにした。 (1)CMV排除後も抗CMV特異的T細胞は長期に渡って残存する。 (2)従って、このメモリー型特異的T細胞の維持にはCMV抗原は必要ではないものと考えられる。
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