研究概要 |
平成14年度の実験結果にて、我々はCMV感染マウスの肺ではウイルスが排除された感染3ヶ月以降でも長期(観察機関:感染後1年間)にわたりCMV特異的T細胞(CMVのIE抗原に対するMHC/tetramerにて検出)CD8陽性、IFN-γ産生細胞が肺に大量(全リンパ球の約10%)存在することを観察した。そこで、平成15年度はこの細胞のcharacteri-zation、及びこの細胞の維持機構について実験を行い以下の結果を得た。 1.このCMV特異的T細胞CD8陽性細胞は肺(非リンパ組織)に存在し、かつ活性化マーカーであるCD69が陽性であったので、Effector memory T細胞であると考えた。しかし、CMV-IE非特異的CD8細胞はCD69は陰性であった。2.この時のCMV抗原の有無をリアルタイムPCR、in situ PCR、in situ hybridization,免疫組織化学(抗IE抗体、抗E抗体)を用いて調べた。しかし、いずれの方法においてもウイルスゲノム、ウイルス蛋白は検出できなかった。従って、我々の実験系ではEffector memory T細胞は抗原非存在下でも維持可能であると考えた。 3.Memory T細胞の維持機構として現在考えられているのは以下の3つがある(K.S.Schluns et al.Nature Rev Vol. 3,p.269,2003)。 (1)Recall antigen:当該微生物の再感染 (2)Cross antigen:常在細菌がもつ抗原が当談抗原と交叉する (3)Bysstader proliferation:リポ多糖(LpS)や細菌DNAのCpGモチーフによる 本研究では(1)の可能性はない。そこで(2)あるいは(3)の可能性を考えた。この2つの可能性はいずれも常在細菌がメモリーT細胞の維持に関与していることを示している。そこで我々は常在細菌叢を欠く無菌マウスを作成し、メモリーT細胞の割合を調べた。その結果感染3ヶ月のSPFマウス、無菌マウスでのCMV特異的CD8陽性細胞の割合はそれぞれ5.5±1.9%,0.9±0.1%であり,GFマウスではメモリーT細胞は検出出来なかった。GFマウスでメモリーT細胞が検出出来なかったことから,SPFマウス,GFマウスのcytokine environmentを比較するこにより,メモリーT細胞の維持に必要なサイトカイン(IL-15)を同定した。
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