(目的)ヒト正常肝臓から分離培養した肝細胞と胆道上皮細胞(BEC)をコラーゲン複層ゲル内で共培養するとBECが3次元の管腔様構造を形成するが、肝細胞の形態学的崩壊のため長期的な胆管再生の観察は困難であった。ヒト肝腫瘍由来有機能肝細胞株(FLC4)は、数ヵ月という長期間にわたり良好な培養が可能なためBECと共培養することで、胆管再生の長期的な観察が可能か検討した。(方法)1.コラーゲン複層ゲルの間にFLC4を5X10^5個とBECを共培養し経時的に位相差顕微鏡で形態学的変化を観察した。2.第1層目のコラーゲン・ゲルの上にFLC4または正常ヒト肝細胞株を5X10^5個蒔き、その上層にコラーゲン・ゲルの薄層を敷いた。この薄層上にBECを蒔き、経時的に位相差顕微鏡で形態学的観察をした。(結果)1.FLC4とBECとの共培養では、BECによる3次元の管腔様構造は観察されなかった。またFLC4はその数を急激に増し、短期間で細胞が過密状態となった。2.コラーゲン複層ゲル内で正常肝細胞またはFLC細胞がコラーゲン薄層を介し近接した状態でのBECの再生の過程を経時的に現在観察中である。(考察)培養液中にBECの増殖のため牛胎児血清、上皮成長因子や肝細胞成長因子を含有することが、FLC4の増殖を促進し短期間に過密状態となった。その結果としてBECとFLCとの細胞の比率は一定に保てず、viabilityの低下につながった事や組織適合性抗原などの相違が原因となり、BECの3次元胆管様管腔構造が観察されなかったと考えられた。方法2では、FLC4の腫瘍性増殖がBECの3次元管腔形成の障害になった可能性を考え、FLC4とBECとの間に薄層のコラーゲン・ゲルを敷いた。本法では組織適合性の問題は解決されないが、FLC4がその数を腫瘍性に増すことによる直接的な影響が排除されBEQの長期観察が期待される。
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