平成14年度は主として癌細胞表面タンパクを認識するヒト抗体を網羅的に単離する新たなシステムを開発することに専念した。 申請者は有機溶媒層を用いて、細胞に対してヒト抗体ライブラリーを反応させる新たな方法を開発し、これを新organic法と名づけた。この方法により細胞表面のタンパクを抗原として認識する多種類のヒト抗体クローンを単離することに成功した。卵巣がん細胞株SKOv-3を用いたスクリーニングでは122種類の抗体を単離し、そのうちのひとつが癌抗原HER2を認識していることを確認した。その他の抗体についてもその認識する抗原を同定する研究を推進している。 申請者はさらに数種類の肝癌、子宮癌、胃癌、大腸癌細胞株についてスクリーニングを進め、現在までに9種類の細胞株に対するスクリーニングを終了、抗体単離を進めている。胃がん細胞株を用いたスクリーニングでは、癌胎児抗原CEAを認識する抗体が得られたので、さらに詳しい解析を進めている。 さらに、手術切除癌組織についても抗体クローンの単離に成功しており、これらについて、癌を認識する抗体を同定する研究を現在進行させている。
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