研究概要 |
本研究の目的は,光感受性物質をレーザー光で励起させ癌細胞を傷害する癌の光線力学的療法の欠点を軽減するために、1)体深部の癌にも適用できるように超音波を用いて光感受性物質を励起すること、および2)光感受性物質を抗体を用いて癌特異的に集積させることにより光過敏症を抑えることを,動物実験レベルで確立することである。 当初の計画では抗MK-1マウスモノクローナル抗体(MAb)を使用する予定であったが,精製量の問題から代わりに抗CEA特異的抗体(F11-39)を使用した.光感受性物質ATX-70とMAbをEDCおよびsulfo-NHSを用い結合させ,ゲルろ過により結合物F39/ATX-70を単離した.F39/ATX-7はin vitroでCEA発現癌細胞株に対してF11-39と同程度の良好な集積性を示した. 次にF39/ATX-70をin vitroでCEA発現細胞株に結合させ超音波を照射したときの細胞傷害活性は,超音波単独での約40%、ATX-70と超音波での約50%に比し,F39/ATX-70と超音波の組み合わせでは約65%と,有意な細胞傷害活性増強効果が認められた. 次にCEA発現MKN-45細胞株を皮下移植したヌードマウスにF39/ATX-70を静注し腫瘍に超音波を照射した.その結果超音波照射単独群に比べ腫瘍の増大が著しく抑制された. 以上のようにF39/ATX-70と超音波照射を組み合わせることにより,光線力学的療法よりも特異的で安全な癌治療法が確立できることが示唆された.以上の結果をもとに,次年度は超音波造影剤の併用効果,および現在開発中の抗MK-1ヒトモノクローナル抗体とATX-70の結合物の効果を検討する.
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