研究概要 |
抗癌剤が、使用前に有効であるかどうかを個々の患者について検討してみることは、非常に有意義である。今回我々は、このCD-DSTのゲル培地を改良して、初期培養のみで培養を終わるのではなく、更に感受性検査後の少数の残った癌細胞から、癌細胞株を容易に樹立できるように、コラーゲン基質を改良し、この樹立細胞株そのものを用いて、p53の変異を検討した。前実験から我々は株化細胞を樹立する際、このコラーゲンにマトリジェルを50%の割合で混合したものが最も効率が良いことを見つけ出した。これを、2次継代し、ついでそのうえに通常の液体培地を加えることにより、術前化学療法を行っていない癌標本からは、ほぼ90%近い細胞株化に成功した。今回、metaplasia, dysplasia, AAH,計7種をこの方法で培養を行ったが、初代培養はコラーゲンゲル中では成功したにも関わらず、やはり正常に近いためか細胞株にまで樹立することはできなかった。したがって、癌化の前段階における解析にはこれまで通り免疫組織染色や直接イムノブロッティングを行うしか無いと考えられた。一方、病理的に肺癌と診断されているものからは,順次、株細胞を樹立していった。I期肺癌は3種の細胞株の樹立に成功し、II期肺癌はやはり3種、またIII期肺癌は化学療法を術前に行っているものが多いためか8例試みたが、コラーゲンgeldropletの段階で壊死に陥っている部分が多く、結局1例しか今のところ樹立していない。次いでIV期肺癌はこれのみ転移部より標本を採取し3種の細胞株の樹立に成功した。これにより、切除癌標本そのものから遺伝子を抽出するのではなく、正常細胞のコンタミを避けて、この樹立細胞株そのものを用いることで、p53の変異についても検討していった。しかし、p53の変異と病期には、関連は認められなかった。更に細胞株を樹立して解析を進めていく予定である。同時に得られた様々な抗癌剤に対する感受性の結果と癌患者の予後の三者によるprospective studyを進めていく。
|