乳癌、子宮内膜癌、前立腺癌などの発生・進展にはステロイドホルモンが促進的に作用するが、がん発生・進展時における具体的な作用については未だ十分には解明されていない。受容体の発現は細胞のホルモン感受性を規定するとともにホルモン療法の有効性にも関係し、また、癌の進展・悪性化に伴うホルモン依存性の消失の現象とも関連して、臨床的にも非常に重要な問題である。また、癌細胞におけるエストロゲンの作用も十分に解明されていない。これまで乳癌の発生・進展に伴うエストロゲン受容体ERα遺伝子の発現制御機構の解明や乳癌細胞特有のERαの機能制御を明らかにしてきた。さらにエストロゲン依存性癌におけるエストロゲンシグナル経路の全容を解析してエストロゲン及びその受容体研究の臨床応用戦略を探る目的でDNAマイクロアレイを用いたエストロゲン応答性遺伝子群の網羅的発現プロファイル解析をおこなった。まず、乳癌培養細胞を対象とした大規模マイクロアレイ法によってエストロゲン反応性遺伝子群を同定した。各種培養細胞株を用いた約9000遺伝子の大規模DNAマイクロアレイ解析の結果、全体のおよそ4%、約300〜400遺伝子がエストロゲンによってその発現が増加または減少する事が明らかとなった。次に同定されたエストロゲン応答遺伝子を乗せたカスタムマイクロアレイチップを作成した。本チップを用いて、エストロゲン受容体(ER)陽性細胞を用いて、基礎的なエストロゲン反応性プロファイルデータを蓄積し、解析方法の確立を計った。現在患者検体の組織サンプルの検討を行っている。
|