研究概要 |
抗腫瘍薬に対する癌細胞の感受性は、癌細胞の増殖状態、細胞周期により規定されており、癌細胞の細胞周期と薬剤投与のタイミングを合わせることで、副作用の少ない癌治療が期待されている。特に細胞分裂の中でDNA合成期、分裂期が薬剤に対する感受性が高いとされており、この時期の癌細胞に、あるいは正常細胞が休止期にタイミング良く薬剤を投与することが肝要である。しかし、癌細胞はheterogeneityが強く各癌細胞は一律に同期しておらず、サーカディアンリズムに合わせて薬剤を投与しても、効果が不十分なことが多い。そこで、時計遺伝子により癌細胞を調律し、さらに体内に生理的に存在する時計遺伝子蛋白により目的遺伝子発現をコントロールし、抗腫瘍効果の向上、副作用の低減を図り癌細胞に時計遺伝子産物により発現するベクターを構築し、生体リズムに合わせた遺伝子治療の可能性を探ることが最終的な目的である。 本年度は、アデノウイルスベクターを用いて、用いる癌細胞株が細胞周期の調律が可能かどうかを、細胞周期抑制因子P27を用いてTFK-1,MD-MB-231,HuCCT1の細胞周期をフローサイトメトリーにて検討した。各細胞株とも、アデノウイルスP27において細胞周期がGO/G1にて停止し、十分今後の研究に使用できることを確認した。
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