研究概要 |
胸部食道癌におけるセンチネルリンパ節の同定には主にRadioisotopと色素を用いた方法が行われている.Radioisotopeの検出感度は良好であるが放射線被爆の他、核医学検査室を有する施設以外では使用できないこと、手術中の投与ができないことといった問題がある.また色素法は簡便に施行できるものの,炭粉沈着により胸腔内での識別が困難であるなどの難点がある. これらの問題点を解決するため、磁性体という新しいリンパ指向性物質を用いたセンチネルリンパ節同定法を検討した.TracerとしてMRI用肝臓造影剤ferumoxides注射液を使用し、上部消化管内視鏡下に食道静脈瘤硬化療法用穿刺針を用い、ferumoxides注射液を腫瘍周囲の粘膜下層に注入した.手術終了後に郭清した全リンパ節のferumoxidesの磁力を、磁気センサーにてex vivoで測定した.また,病理組織学的リンパ節転移の有無を検討した.センチネルリンパ節と同定したリンパ節の辺縁洞にはferumoxides粒子の取り込みと、Macrophageに貪食されている像を認め,組織学的にもferumoxides陽性が裏付けられた.センチネルリンパ節は,1例あたり1個から27個であり、平均9.3個と多くの症例で多数個であった.磁性体を用いた新しいセンチネルリンパ節同定法は胸部食道癌患者に有用であり,Radioisotopeや色素を使わずにセンチネルリンパ節を同定できた.また胸部食道癌のセンチネルリンパ節は,頸部,反回神経,胸腔内,胃噴門周囲と広範囲に分布することが多く,センチネルリンパ節理論による縮小手術は難しいと考えられた.
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