研究概要 |
低電圧in vivo電気穿孔法を用いた腫瘍に対する電気穿孔法の基礎的検討 BTX社の電気穿孔機器ECM630を用いて、マウス皮下腫瘍モデルでのプラスミドDNAによるp53遺伝子を用いた食道癌細胞の抗腫瘍効果、抗癌剤の併用効果について報告してきたが、これらは、1500〜2000 voltageと高電圧をかけて細胞膜に穴をあけ、目的とする物質を移入するものであった。今回、生体に安全に使用する目的で、低電圧で使用可能な電気穿孔機器(トキワサイエンス社製CUY21)を用いた。Bleomycinを用いたelectrochemotherapyの基礎的検討で、低電圧による電気穿孔法の有用性を確認した。マウス腫瘍colon 26を同系のBalb/cマウス背部皮下に移植し、電圧50〜100 voltでelectroporation法を用いて、Bleomycinを移入すると腫瘍退縮が2週間前後で急速にみられた。電気穿孔法のみでは腫瘍増殖は抑制できなかった。また、electrochemotherapyで腫瘍が退縮したマウスに腫瘍を再チャレンジするとほぼ100%のマウスにおいて腫瘍の再増殖が抑制された。この現象はヌードマウスを用いた実験系ではみられず、T細胞が関与した宿主の腫瘍拒絶機構が電気穿孔法による腫瘍退縮機点に発動されていることを確認した。また、免疫染色でマクロファージの浸潤像が見られた。 血管新生抑制遺伝子導入とその導入効率の基礎的検討 マウスの血管新生抑制遺伝子angiostatin, endostatin,および両者をlinkさせたangiostatin-endostatinの遺伝子(pBLAST-mAngio, pBLAST42-mEndoXV, pBLAST42-mEndo, Angio)のプラスミドをE.coliにtransformationして増やした。低電圧電気穿孔法による遺伝子導入の至適条件を、電圧変化およびルシフェラーゼプラスミドの濃度を変化させて遺伝子導入を行い、組織中のルシフェラーゼ活性値を計測して決定した。至適電圧は50voltまた、プラスミドの濃度は、50μg/100μlで効果的な遺伝子導入を得た。この条件で、Lac Z遺伝子を導入してβ-galactosidase染色を行うと、プラスミドの染色性が高く見られた。 現在、in vivo遺伝子導入をこの至適条件下において行い、血管新生抑制遺伝子の導入による腫瘍抑制効果を検討している。
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