研究概要 |
肝胆道系の(肝臓、胆管、膵臓)悪性腫瘍や食道癌に対する外科手術後には感染を伴う合併症の発生頻度が高く、多臓器不全に陥る症例もあり、極めて重要な問題である。 本研究では、外科手術患者を対象にTNF及びIL-10遺伝子多型が手術侵襲後の生体反応と合併症に及ぼす影響を検討し、術後感染症のハイリスク群を明らかにするとともに、STAT4 knock out mouseおよびSTAT6 knock out mouseを用いて重症感染症時の臓器不全発症のメカニズムを明らかにした。初年度の研究では、日本人におけるTNF及びIL-10の遺伝子多型を明らかにするとともに、これが手術侵襲後の生体反応と合併症特に術後感染症に及ぼす影響を検討した。また、CLP ModelとOBJ Modelを用いて、各障害臓器でのTNF, IL-10, IL-13, CXC chemokineであるmacrophage inflammatory protein (MIP)-2およびKC, CC chemokineであるmacrophage chemoattractant protein-1 (MCP-1)の動態を、ELISA, RT-PCR,免疫組織染色,northern blot, western blot等で測定し、炎症細胞浸潤および組織障害との関連を明らかにした。 外科手術患者を対象とした研究では、TNF及びIL-10遺伝子多型が手術侵襲後の生体反応と合併症に有意な関連が認められ、ハイリスク群の同定の手がかりとなると考えられた。動物実験の検討からは、過大侵襲後の臓器不全発症には炎症細胞のNF-kappaBの活性化が極めて重要であると考えられた。
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