研究概要 |
(1)リボザイム法によるグラフト肝MHC抗原の発現の抑制による移植肝拒絶反応制御に関する研究: 臓器移植片の急性拒絶は,主としてT細胞によるグラフト細胞表面のMHC抗原の認識と組織破壊により起こる.我々は、このドナー標的抗原をそのリボザイムRNAの導入により,発現をdown-regulationし,移植後の宿主の拒絶免疫反応を抑制できるかを検討した。ラットMHCクラスI遺伝子であるRT1.A^aのアミノ酸配列より、有効にRNA切断活性をもつと予想されるリボザイムを設計し、発現ベクターに組み込みんだ。次にドナーPVG.R8ラットの大動脈内皮培養細胞に導入し、導入後のRT1.A^a抗原の発現の抑制をモノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリーで評価した。さらに、MHCクラスIのみ相違するレシピエントPVG.1Uラットの脾細胞をエフェクターとして細胞障害活性を測定、最も有効にRT1.A^aの発現を抑制し得たリボザイムを選択を試みた。しかしながら、導入後のRT1.A^a抗原の発現はフローサイトメトリーでは認められるものの、PVG.1Uラットの脾細胞をエフェクターとして用いた細胞障害活性その抑制効果はごくわずかであり、現在のところリボザイムの設計を再考している。 (2)肝切除後の血管増殖因子の発現と類洞内皮細胞再生機序に関する研究: ラットに70%肝切除を行い、(1)再生肝組織よりmRNAを分離し、RT-PCR法を用いてAng1、Ang2、及びTIE2のmRNAの発現の推移を検討。(2)再生肝組織を肝細胞,類洞内皮細胞、Kupffer細胞および星細胞をそれぞれ分離・培養し、それらよりmRNAを分離し、Ang1,、Ang2,及びTIE2のmRNAの発現を評価した。現在までの実験結果より、類洞内皮細胞の増殖後には、血管内皮細胞の分化を誘導するAng-1の産生が増強、さらに遅れてIto細胞からAng-2の産生が亢進を認めるものの、肝細胞からのVEGFの産生はなくこれが類洞内皮細胞のapoptosisを誘導していると考えられた。したがって、これらVEGF, Ang/Tieシステムにより類洞内皮細胞の増殖が調節されていると考えられた。
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