研究概要 |
保存膵切除標本のよるリンパ節での微小転移検索 【対象】従来HE染色でリンパ節転移陰性と判定された9例を対象に微少転移の検索をretrospectiveにおこなった。 【方法】5mm間隔連続標本を4μの切片に薄切し、HE染色した後に検鏡する従来法と、4μの完全連続切片に対して抗cytokeratin(CK)(抗体CK19抗体を使用)による免疫染色とHE染色を併用した完全連続切片法を比較して微少転移の頻度と臨床的意義を検討した。微小転移とは、従来法では発見できなかったが完全連続切片法にて新たに発見できたすべての癌転移巣と定義した。 【結果】9症例、474個のリンパ節に対し完全連続切片法による微小転移の検索を行い、リンパ節を含む16,505切片を評価した。6症例(67%)、10個(2.1%)に微小転移が認められた。微小転移は細胞集塊を形成するか、管腔を形成する転移形式で、single cellでの微小転移は見られなかった。部位別には膵頭前・後部リンパ節に6個(13aが4個、17aが2個)、腸間膜根部リンパ節に4個(14aが2個、14bが1個、14vが1個)であった。症例別では1例が3個に(17a,13a,13a)2例が2個に(14a,14aと13a,14v)3例が1個に(17aと13aと14b)微小転移を認めた。なお、大動脈周囲リンパ節(16)には微小転移は存在しなかった。微小転移の有無と予後との関係を検討したが有意な相関は得られなかった。 【まとめ】以上より膵癌におけるリンパ節への微小転移の頻度は予想以上に高いことが判明し、このような膵癌の臨床病理学的特徴を理解したうえでリンパ流を十分考慮した外科治療方法を選択する必要があると考えられた。すなわち、膵癌外科治療においては上腸間膜動脈周囲のリンパ節には早期に転移しやすく、同部位を過不足ないリンパ節郭清を行う必要があると考えられた。
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