研究概要 |
癌細胞の情報伝達機構は、細胞膜上において細胞外からの情報を受けた後、細胞質内をいくつもの伝達物質を介して、最終的に核内に情報が伝達され、作用が発現される。重要な細胞内情報伝達系の1因子としてProtein phosphataseが知られており、リン酸化反応を律速段階として情報の伝達を制御している。その情報伝達機構からの逸脱は細胞の増殖、転移に関わっていることが予想されている。今回大腸癌におけるホスファターゼ蛋白の1つ、PPP1R3遺伝子(染色体7q31に位置、Protein phosphatase 1(regulatory 3)をコード)の変化について検討した。 【方法】1)対象は当科において切除手術を施行した大腸癌症例25例としてRNAを抽出後、SSCPをおこない、異常の認められた症例においてDNAシーケンスをおこないPPP1R3遺伝子変化について検討した。2)遺伝子変化の認められたexonを欠損させたdeletion mutantを作製して、核内転写活性について検討をおこなった。 【結果】 (1)PPP1R3のSSCP解析において、大腸癌症例25例中3例(12%)に異常が認められた。 3症例についてDNAシーケンスをおこなったところ、2症例はexon 4,1症例はexon 1にPoint mutationが確認された。 (2)PPP1R3full遺伝子ではFOS luciferase活性が増加するが、exon1またはexon4のdeletion mutantではFOS luciferase活性の増加は認められなかった。 【総括】 一部の特定な大腸癌においてProtein phosphatase 1 (regulatory 3)蛋白質は細胞内プロセスを制御することが示唆された。
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