研究概要 |
【目的】食道がんの手術侵襲、また担癌状態はT細胞性の免疫能低下をもたらすと考えられる。そこで手術侵襲が及ぼす影響を検討する前に術前の担癌状態での単球をまず検討した。癌患者におけるT細胞機能不全の機序として、腫瘍浸潤マクロファージがcontact dependentにT細胞のsignal ransducmg TCR zeta分子を障害し、apoptosisを惹起することを報告してきた。このcontact dependentなmediatorのひとつとして活性酸素H2O2が関与している。そこで、今回、さらに担癌での単球・マクロファージ系の変動を検討する目的で、単球の表面抗原H2O2産生能、細胞内サイトカインを測定し、担癌での単球の変動を評価した。さらに健常人の単球を患者血清と混合培養し・単球細胞内サイトカインを測定し、担癌状態での単球と比較した。 【方法】健常人、早期胃癌患者、進行胃癌患者の末梢血より単球を分離し表面抗原(HLA-DR、MAC-1)の発現H2O2産生能、細胞内サイトカイン(IL-10,IL-12)をflow cytometerで測定した。さらに健常人より分離した単球を患者血清と混合培養し、単球の細胞内サイトカイン、(IL-10,IL-12)をflow cytometerで測定した。 【結果】健常人(n=11)、早期胃癌患者(n=17)、進行胃癌患者(n=12)の間に、表面抗原(HLA-DR、MAC-1)の発現、H202産生能において、有意差は認められなかった。単球細胞内サイトカインIL-10は48.8±26.25、早期胃癌患者は54.0±29.3、進行胃癌患者は101.7±71.0で、健常人と進行胃癌患者間、早期胃癌と進行胃癌患者間で有意差を認めた。また単球細胞内サイトカインIL-12は20.6±6.4、早期胃癌患者は22.4±8.1、進行胃癌患者は52.2±46.5で、同様に有意差を認めた。また、健常人単球と患者血清の混合培養にて細胞内IL-10、IL-12ともに上昇を認めた。 【結語】胃癌患者では、癌の進行とともに、単球細胞内サイトカインのレベルにおいて機能的差異が存在し、この機序として、患者血清中の因子が関与していることが示唆された。
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