研究概要 |
我々は新しい分裂期の染色体分離、分配に関与する遺伝子群のヒト癌組織及び癌細胞への関与を分子生物学的手法を用いて証明し、これらの遺伝子群が新しい分子マーカーや分子標的治療となりうる可能性を探求している。我々は、はじめにM期の中心滞に存在し、分裂期に異常をきたすとchromosomal instabilityを認め、癌化に関与すると考えられるAurora-A(別名HsAIRK1)、Aurora-C(別名HsAIRK3)が免疫組織染色にて大腸癌で過剰発現を認めることを報告した(JJCR91,1007-1014,2000)。またAurora family (Aurora-A, B, C)についてRT-PCR法を用いて、mRNAレベルにおいて高発現し、特にAurora-Aについては85.7%と高頻度に高発現を認め、癌化への関与を示唆する結果を報告した(日本外科系連合学会誌、2003 in press)。またPolo-like kinase(PLK)はAurora遺伝子ファミリー同様分裂期の中心帯に位置する遺伝子であるため、大腸癌で遺伝子発現異常を免疫組織染色により解析した。15例の大腸正常粘膜と78例の大腸癌で検討したところ57例(73.1%>に高発現を認め、発現異常は進行度と相関し、また増殖能と関連があることを明らかとした。そして興味深いことにPLK1とAurora-Aも統計学的に有意に相関していた(JJCR,2003,in press)。次にPLK family(PLK1,2,3)についてRT-PCR法でmRNAレベルの発現を解析し、PLK1は蛋白レベルとほぼ同様65%の高発現を認めました。興味深いことにPLK3は高発現している群と低発現している群があることがわかり、またp53遺伝子異常とも相関することを初めて明らかにした(日本外科系連合学会誌、2003 in press)。我々は細胞分裂期関連遺伝子が癌、に大腸癌で異常発現していることを報告し、更に他の細胞分裂期関連遺伝子についても詳細な解析を継続し、次年度でこれらの分子を用いてどのように臨床応用していくのかを検討予定である。
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