研究概要 |
我々は細胞分裂期の染色体分離、分配に関与する遺伝子群のヒト癌への関与を探求している。Aurora-A(別名HsAIRK1), Aurora-C(別名HsAIRK3),そしてPLK1が免疫組織染色にて大腸癌組織が正常大腸粘膜より蛋白レベルで高い発現を示すことを報告してきた。基礎的データにてこれらの蛋白は細胞分裂期の中心帯に位置し、これらの異常によりchromosomal instabilityをきたし、癌化に関与する報告がされている。我々のデータではAurora-A、またはAurora-Cの発現が高い癌はPLK1の発現も高いことを多く認め、これらの蛋白発現は相関することを認めた。また大腸癌組織のみならず、前癌病変とされる大腸腺腫においてAurora-Aについて正常組織よりは高い発現を認めることが多く、大腸正常組織、大腸腺腫、そして大腸癌という順に発現程度が高くなり、頻度も高くなった。つまりadenoma-carcinoma sequenceを示唆するデータであった。これについては大腸腺腫でPLK1を免疫組織染色で解析したところPLK1においても同様に大腸腺腫で高い発現を認める症例があり(unpublished data)、その結果よりこれらの分子は癌化の早い時期から異常を認めると考えられた。大腸癌以外に胃癌でも検討したところ36例中23例(63.9%)に胃正常粘膜に対し高発現を認めた(preliminary data)。最近、甲状腺癌でもPLK1は高発現を示す報告がされ、他の癌腫においても共通に高い発現を示すのかを検討したいと考えている。細胞分裂期の中心帯に位置する他の蛋白につても同様に発現に関する検討をすすめている。大腸癌、胃癌細胞株を用いて、これらの発現が高い細胞を用いて、発現低下が癌腫の増殖に関与するかどうか検討したいと考えている。
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