研究概要 |
我々は細胞周期のM期における中心体の働きに関与する分子に注目してきた。最近重要な分子と考えられているAurora family, PLK familyが癌細胞で発現が高いのかどうかを検討してきた。いろいろな癌腫ではaneuploidyやchromosomal instabilityあるいは中心体異常を指摘されており、これらの異常の原因はAurora-Aをはじめ、これら細胞分裂期に関与する分子の異常によると推測されている。免疫染色などによるこれらの分子発現を検討したところ大腸癌ではAurora-Aは68%,Aurora-Cは51%,PLK1は73%に過剰発現していた。また大腸癌の前癌病変とされる大腸腺腫においてもAurora-Aは31%に過剰発現を認め、PLK1も同様に過剰発現を認めた。しかしAurora-Cにおける腺腫の過剰発現は低頻度であった。癌の早期診断のマーカーとして応用可能と考えられる。最近Aurora-Aについては乳癌、卵巣癌、膀胱癌、膵癌、肝癌、食道癌においても過剰発現が報告され、ステージや予後と相関する論文もでてきている。PLK1においても肺癌、頭頚部癌、卵巣癌、甲状腺癌などで過剰発現の報告がされ、これらは大変重要な分子であると考えられる。われわれは胃癌においてもPLK1が過剰発現していることを調べた。PLK familyにはPLK1のほかにPLK2,3,4が存在するのでこれらの分子においても詳細に検討したい。Aurora, PLK familyと同様、M期に関与するとされるNek2についても発現を調べた。Nek2は、細胞分裂期に関わるNIMA familyを代表するprotein kinaseである。Nek2が大腸癌において54%(38/70)と高頻度に高発現することをつきとめた。またNek2の発現はPLK1の発現と相関するようであった。Nekは11種類のfamilyがあるとされるため他の分子についても検討していきたい。また現在これらの分子の発現の、原発巣と肝転移巣、リンパ節転移巣の違いについても検討中である。
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