研究概要 |
p27^<kip1>のユビキチンリガーゼSkp2を導入してp27^<kip1>の分解を亢進させたヒト大腸癌を作製し,ウエスタンブロット法ににてSkp2の発現とp27^<kip1>の低下を解析し,Skp2高発現細胞を既に樹立した.これはp27^<kip1>ノックアウト癌細胞樹立に先だって,Skp2過剰発現にてp27^<kip1>発現低下させた細胞をもちいてin vivoにおける実験を先行させた. in vivoにおけるp27^<kip1>発現低下ヒトがん細胞の転移能の検討 BALB/Cヌードマウス脾注肝転移モデルを用いて,Skp2高発現細胞p27^<kip1>発現低下ヒトがん細胞の転移能の検討を行った.本モデルでは,着床後の転移巣形成および腫瘍増殖に関するp27^<kip1>の関与を評価した.Skp2過剰発現細胞(HCT/Skp2 cell)とHCT wild type cellを1×10^6個をBALB/Cヌードマウスへの脾臓へ注入し3分後に脾臓摘出.40日後に犠死し肝転移を評価した.1匹あたりの転移個数ではHCT/Skp2 cellでは0.917±1.51個でHCT wild type cellは1.727±2.24でp=0.5で有意差を認めなかったが肝重量ではHCT/Skp2 cellは1.944±0.22でHCT wild type cellは1.1125±±0.33,P=0.0267と有意差を認めSkp2を過剰発現させた細胞の転移能の亢進が示唆された.しかし血管新生については明らかな差を認めなかった. in vivoにおけるp27^<kip1>発現低下ヒトがん細胞の腫瘍増殖能の検討 これらの細胞を皮下に注入し,皮下腫瘍を作製し,p27^<kip1>発現低下における腫瘍増殖能の検討を行った.同様にSkp2過剰発現細胞(HCT/Skp2 cell)とHCT wild type cellを1×10^6個をBALB/Cヌードマウス皮下へ注入し皮下腫瘍作製し評価した.Skp2過剰発現細胞での腫瘍は皮下腫瘍重量(P=0.042)及び体積(P=0.019)ともに有意に増大しており増殖能の亢進が示された.また,Skp2過剰発現細胞での腫瘍は増殖能の亢進(PCNAで評価)ともにapoptosis(TUNEL法での評価)も亢進していた. 悪性度の増強をもたらすp27^<kip1>の下流遺伝子の検索 上記のSkp2過剰発現細胞(HCT/Skp2 cell)とHCT wild type cellマイクロアレイ(受託)およびサブトラクション法を用いて発現量の変動した遺伝子の同定を行った.そのなかでCYP24,metallothioncon E等の候補が上がった.CYP24は皮下腫瘍の大きさが小さいほどその発現が大きい傾向を認め、候補の1つと考えられる.その他の遺伝子については現在検索中である. p27^<kip1>ノックアウトヒトがん細胞の増殖,転移能の検討 現在p27^<kip1>ノックアウトはヘテロノックアウトが作製され同様にin vivoでの評価を行ったが,p27^<kip1>ノックアウトヒト大腸癌細胞での皮下腫瘍はwild typeより増大傾向をもみとめたが有意な差を認めなかった.現在ホモでのp27^<kip1>ノックアウト作製中である.
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