研究概要 |
本研究においては、膵癌に対する臨床効果のある治療法として免疫療法と化学療法の併用という新たな治療法の開発を目指している。免疫療法としては癌ワクチン療法を、化学療法の薬剤としてはゲムシタビン(GEM)を組み合わせることを計画している。GEMに関しては、まずin vitroにヒト膵癌に対する抗癌剤の抗腫瘍効果を確認することとした。新たに樹立したヒト膵癌細胞株(YPK-1)を論文発表し、YPK-1に対する抗腫瘍効果を実験的に確認したところ、GEMのIC50は0.0063μg/mlとシスプラチンの1.26や5-Fuの3.16に比べ明らかに低く、GEMの抗腫瘍効果は期待できるものであった。さらに動物実験にて細胞性免疫を阻害しないことが報告された(Cancer Research 62,2353-2358,2002)。以上より、GEMによる化学療法においては、GEMによる直接的抗腫瘍効果が望めるとともに、免疫療法による細胞性免疫の賦活化を阻害せず、免疫療法との併用療法にてより強い抗腫瘍効果が期待できることが考えられた。免疫療法である癌ワクチン療法に関しては、MUC1ペプチドを使用することを計画当初予定していた。MUC1ペプチドワクチン療法第I相臨床試験の臨床効果は9例中8例がPDであり、1例にNCを認めた。その後第I相臨床試験を行った癌退縮抗原ペプチドワクチン療法では10例中3例にNCを認め、さらに、CTL誘導能においてもMUC1ペプチドワクチン療法を凌ぐ結果であり、MUC1ペプチドワクチン療法より癌退縮抗原ペプチドワクチン療法の方がより高い臨床効果が望めると判断した。 現在は「膵癌に対する癌退縮抗原ペプチドワクチン療法とGEMによる化学療法の併用療法の開発」ということで臨床試験を準備中である。
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