【方法】Balb/Cマウスを用い、肝温虚血再潅流前のpreconditioning(-)とpreconditioning(+)の群に分けた。preconditioningは10分間の全肝虚血、10分間の再潅流、温虚血は90分間、その後再潅流を行った。Preconditioning前後、温虚血後15、30、120分、再潅流後15、30、60、120分後に肝生検を行い、Aktの発現量と、そのリン酸化量をWesten Blottingで調べた。また、Preconditioningの肝虚血後の生存率に与える影響(各群n=10)と、Aktのリン酸化阻害剤(wortmannin)の影響を調べた。 【結果】preconditioning(-)の群において、Aktは温虚血前には生理的な弱いリン酸化を認めたが、温虚血によりそのリン酸化は消失した。再潅流により温虚血前のリン酸化状態を回復した。一方、preconditioning(+)の群においては、温虚血中のリン酸化の消失は同じく認めたが、再潅流により直後(15分)から著しいリン酸化の増強を認めた。虚血後の生存率は、preconditioningを行うことで30%から70%へ改善された。しかしながら、wortmanninを虚血後に投与することでpreconditioningの効果は消失し、生存率は30%に低下した。Wortmanninの単独の毒性を調べるため、60分虚血群に投与したが生存率は100%であり非投与群と変わりがなかった。 【総括】肝温虚血再潅流時におけるpreconditioningのメカニズムとして、再潅流後のapoptosisの阻害が関与しているとする報告がなされている。これは、Aktを通したシグナルである可能性が示唆された。
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