研究課題/領域番号 |
14571204
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器外科学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
富川 盛雅 九州大学, 大学病院, 助手 (60325454)
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研究分担者 |
橋爪 誠 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (90198664)
川中 博文 九州大学, 大学病院, 助手 (10363334)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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キーワード | 門脈圧亢進症 / 循環亢進状態 / 肝内血管抵抗増大 / eNOS / 肝星細胞 / NO / RHOkinase / AKT |
研究概要 |
【研究目的】 肝硬変症における門脈圧亢進症の機序として、(I)肝内血管抵抗増大および(II)胃をはじめとする門脈系臓器の循環亢進状態による門脈流入血流増大が考えられる。我々は、(I)循環亢進状態に関与しているNO、TNF-α、VEGFに関連した分子機序ならびに(II)肝硬変における肝星細胞の活性化や類洞内皮細胞のeNOS不活化に関連した分子機序を解明し、治療へと展開するすることを目的とした。 【研究成績】 1.門脈圧亢進症ラット胃粘膜においては、TNF-αによりPI3K/Aktを介したeNOSリン酸化が亢進し、NO産生が亢進していることより、抗TNF-α抗体やWortmannin(PI3K阻害剤)などは、循環亢進状態に対する分子標的治療薬になる可能性がある。 2.門亢症胃粘膜における脆弱性や修復の障害は、門脈圧亢進症で認められるoxidative stateによって引き起こされるERK不活化酵素MAPkinase phosphatase-1(MKP-1)の過剰発現によって、障害の修復過程に必要なERK活性化が傷害されることが一因と考えられた。また、スカベンジャーであるVitamin Eは、門亢症胃粘膜のMKP-1の過剰発現を是正し、エタノールによる胃粘膜障害を改善したことより、VitaminEは、MKP-1発現を正常化しERK活性を正常化させるため、門亢症胃粘膜治療の一つのオプションになり得る。 3.門脈圧亢進症胃粘膜においては、過剰なNO産生により、HIF-αを介したVEGF発現が抑制されており、血管新生が障害されていることが判明した。 4.新規ROCK/RHOkinase阻害剤(Fasudil)は、1%Dimethyl Nitrosamine (DMN)によるラット肝硬変症モデルにおいて、肝星細胞の活性化を抑制し、肝線維化を抑制することがわかった。 5.肝星細胞活性化に関係するRho kinaseは、ラット肝硬変における類洞内皮細胞においても、PI3/AKTを介してNOのdown regulationに関与していることが判明し、Fasudil(Rho kinase inhibitor)は門脈圧、肝組織血流量、肝組織酸素化Hb含有量とも有意に改善することがわかった。今後、Rho kinaseのコントロールは、肝硬変ならびに門脈圧亢進症治療の分子標的治療になりうる可能性がある。
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