研究概要 |
【目的】高ビリルビン血症に対する高圧酸素療法の有用性を、ビリルビン抗酸化作用の観点から検討した。 【方法】黄疸患者15名より血清および尿を採取し、高圧酸素療法前後での血清ビリルビン(BR)、過酸化脂質(MDA)および尿中のビリルビン酸化物(BOM)、8水酸化デオキシグアノシン(80HdG)、アクロレイン(ACR)をそれぞれ測定した。非黄疸患者6名を対照とした。 【結果】黄疸例では高圧酸素療法前後でBR値がそれぞれ8.7±4.1mg/dlと8.3±4.5mg/dl(p=0.99)、B0Mが812±703μg/g cre.と912±753μg/g cre.(p=0.64)であった。80HdG、ACRに変化はなかった。MDAは3.0±1.0nmol/mlから3.3±1.1nmol/ml(p=0.02)へと有意な上昇を認めた。非黄疸患者のBR、BOMは、高圧酸素療法による影響は認めなかったが、80HdGは15.2±7.4μg/gcre.から15.7±7.5μg/g cre.に上昇した(p=0.08)。また黄疸例では非黄疸例と比較し、高圧酸素投与前からBOM(p<0.01)、MDA(p=0.07)、ACR(p=0.08)が高値を示した。BRとBOM(y=115x+1.8,r=0.845,p<0.0001)、BRとMDA(y=0.189x-52,r=0.794,p<0.0001)、またBOMとMDA(y=0.001x+2.1,r=0.746,p<0.0001)には有意な相関が認められた。 【考察】黄疸患者・非黄疸患者ともに高圧酸素投与により活性酸素が産生されるが、前者ではその消去にビリルビンの関与が示唆された。黄疸患者ではさらに高圧酸素投与前より高活性酸素状態にあり、ビリルビンが既に抗酸化剤として作用していた。
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