骨髄由来幹細胞による潰瘍性大腸炎治療の可能性を検討するために、BALB/Cマウスに1200cGyの放射線照射後、全身の細胞にgreen fluorescence protein:GFPを発現しているトランスジェニックマウスの骨髄細胞を移植し、キメラマウスを作成して骨髄由来細胞の胸腹部臓器への分布を検討した。骨髄移植1ヶ月後の骨髄キメラ率は90%に達し、このとき骨髄、肝、膵、小腸、腎、肺およびリンパ系各臓器へのGFP蛍光陽性細胞の分布が観察され、血管内皮細胞、マクロファージなどへの分化傾向を観察した。免疫染色、蛍光顕微鏡あるいは共焦点顕微鏡による観察では、リンパ系臓器である胸腺、脾臓、リンパ節、小腸粘膜下リンパ組織などでは骨髄由来の細胞が速やかに供給され多くのGFP陽性細胞を認めるのに対して、肝、膵、小腸、腎、肺などの上皮に分化する細胞は極めて少数であった。特に小腸では放射線照射後に粘膜高が減少し絨毛のやせを認め、小腸粘膜下に多数のGFP陽性細胞をみとめた。これらの多くはB細胞であることが確認され、また粘膜上皮間T細胞におけるGFP発現も観察された。一方、間質の血管内皮にもGFP陽性細胞を認めたが、上皮組織への分化は認めなかった。
|