研究概要 |
肝臓外科手術あるいは肝臓移植手術では、術後肝不全を回避するために虚血再灌流障害に対する治療が重要である。また肝虚血が長時間に及ぶ場合,肝虚血障害から立ち直るため肝再生能をいかに高めるかが問題となる。本研究では、骨髄細胞由来細胞群が肝虚血再灌流障害による肝再生に関与しているか否か、さらにはいかなるzoneの障害が再生に影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とする。平成14年度は骨髄移植モデルを用いた検討に先立ち長時間の肝虚血が肝組織に及ぼす影響とその推移を詳細に検討した。また,骨髄移植モデルを用いて肝虚血再灌流後における骨髄からの細胞供給の可能性について検討した。 【材料と方法】Wister系ラットを用いて肝片葉虚血モデルを作成し,30分60分90分120分の肝虚血の後に再灌流を加え,肝酵素の変動,壊死領域の変化,PCNA陽性細胞の数と分布について検討した。さらに,B6マウスをレシピエントとし,12Gy放射線照射後にグリーンマウスから分離した骨髄細胞を移植した。この移植細胞の生着する7日後以降に60分の肝虚血を加え,再灌流後、経時的に観察し骨髄からの細胞供給量を解析した。 【結果】骨髄移植1ヶ月後の骨髄キメラ率は90%に達し、このとき骨髄、肝、膵、小腸、腎、肺およびリンパ系各臓器へのGFP蛍光陽性細胞の分布が観察され、血管内皮細胞、マクロファージなどへの分化傾向を観察した。免疫染色、蛍光顕微鏡あるいは共焦点顕微鏡による観察では、リンパ系臓器である胸腺、脾臓、リンパ節、小腸粘膜下リンパ組織などでは骨髄由来の細胞が速やかに供給され多くのGFP陽性細胞を認めるのに対して、肝、膵、小腸、腎、肺などの上皮に分化する細胞は極めて少数であった。特に肝では多くのKupffer細胞と少数の内皮細胞がGFP陽性となる像を確認することができたが、肝実質あるいは胆管上皮へと分化する細胞は認められなかった。また、虚血再灌流後には肝内へ多数のGFP陽性炎症細胞の浸潤とGFP陽性の血管内皮細胞を認めたが、肝実質あるいは胆管上皮へと分化する細胞は認められなかった。
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