本研究の目的は、従来の画像診断機器で描出されない時期の消化器癌肝転移巣をポジトロンCTを用いて検出することと、肝転移巣以外の再発巣を検出することであった。さらに、初期に発見した肝転移巣に対する治療を実際の臨床の場で実践し、治療成績を向上させることも目的とした。 1 転移性肝癌モデルによる解析 (1)家兎(20羽)にVX2を肝表面に移植して転移性肝癌を作成し、かつ、ダグラス窩に移植した。 (2)ポジトロンCTを用いた0-15水静注動態法により、非癌部肝血流量の測定を行い、同時にFDG法によるポジトロンCT撮影を行った。 (3)前者を用いて非癌部肝組織血流量を計測した。 (4)転移性肝癌のある肝葉とダグラス窩の転移巣を摘除した。 (5)正常群(家兎20羽)、肝転移のみの群(家兎20羽)との比較を行った。 2 臨床における大腸癌患者 (1)肝転移のない進行大腸癌患者についてポジトロンCTにより肝血流量を測定した。 (2)肝転移を生じた症例についてはポジトロンCTにより肝血流量を測定し、FDG法によるポジトロンCT撮影を行った。 (3)適応を満たす患者には肝切除を行い、その他の症例には肝動注用アクセスを留置し、在宅間歇的持続肝動注療法を行った。 (4)肝切除可能な患者については、肝切除時に得られた切除肝について抗VEGF抗体等の抗血管新生因子抗体を用いて免疫組織染色を行った。 (5)平成14年の時点で、肝切除の適応であった症例(FDG法によるポジトロンCT撮影のみが陽性の症例)の解析を行った。 (6)これまでの治療成績の解析を行った。 以上の結果、非癌部肝組織血流量は、門脈血流量の低下と動脈血流量の増加が観察された。これは血管新生によるものと示唆された。
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