研究概要 |
本研究課題では2年間の研究期間内に微量なタンパク抽出液から,迅速,かつ簡便にタンパクの定量が可能で蛋白質の機能解析も,薬剤のスクリーニングを行い,平成15年度分として以下の成果を得た. (1)パーフォリンによる細胞膜傷害活性の定量的評価システムを開発し,論文を投稿中である. (2)現在までに,特定のパーフォリンの阻害作用をもつ薬剤の特定には至っていないが,serine protease inhibitor (serpin)を有効な標的分子として解析を行った.未だ,機能的には不明な分子であるが,mammary serine protease inhibitor (mammary serpin, maspin)がその候補として考えられ,浸潤転移能の強い甲状腺未分化癌で過剰発現を認めた. (3)granzyme Bの定量システム定量的評価システムを開発し,論文を投稿中である. パーフォリンの細胞障害機構には依然不明の点もあるが,癌抑制遺伝子maspinがその阻害作用を持つ可能性が示唆された. 生体内分子間相互作用解析装置を用いた細胞膜障害活性試験には以下の問題点が挙げられた. (1)assayに使用するセンサーチップの価格が高価であり,多数例の臨床検体を扱うには問題があった. (2)組み換え蛋白質あるいは培養細胞株を用いた検討では良好な結果が得られたが,臨床検体ではdegradationの程度が微小で,評価可能なレベルにならなかった. (2)は本assay系にとって最も大きな問題であり,組織抽出液中に阻害物質の混入している可能性,抽出物による反応系のpH変化などの原因が考えられた.今後は人体材料からのサンプル採取法に改良を加える必要が考えられた.
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