正常粘膜の遺伝子変化検索による大腸癌好発状態の検討

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14571223
• 研究機関: 自治医科大学
• 研究代表者: 小西 文雄 自治医科大学, 医学部, 教授 (20142242)
• 研究分担者: 河村 裕 自治医科大学, 医学部, 講師 (80301109) ; 甲斐 敏弘 自治医科大学, 医学部, 講師 (40260830)
• キーワード: 大腸癌 / 正常粘膜 / 遺伝子変化 / Loss of imprinting / IGF-II

研究概要

大腸癌症例において、癌組織のmicrosatellite instability(MSI)とIGF II遺伝子のloss of imprinting(LOI)について検索し、MSIとIGFIIのLOIとの関連および、LOIを指標として癌好発状態が背景粘膜にも存在するか否かを検討することを目的とした。当施設で切除された大腸癌症例119例につき、MSIの検索を行った。microsatellite markerとしては、国際基準の6マーカを用いた。また、IGFIIのLOIを検索するにあたり、IGFII geneの1塩基多型を利用したApa I制限酵素反応によるフラグメント解析にて両アレルが識別可能な症例を検索した。検索には切除組織の正常粘膜部から抽出したDNAを用い、蛍光primerを用いてgenetic analyzer(ABI 3000)で判定した。これにより選抜された両アレル識別可能症例の腫瘍組織および正常粘膜組織からm-RNAを抽出、c-DNAを作製し、IGFII geneの両アレル発現の有無を前述の方法と同様genetic analyzerを用いたフラグメント解析で検索し、IGFII geneのLOIの有無を判定した。従来のRIを用いた電気泳動による方法と比較し、我々が新たに行った上記方法では蛍光プライマーを用いる点で簡便であり、また、multi-capillary電気泳動を用いることにより多検体を迅速に分析できる点で優れた方法であることが確認された。現時点における検索結果では、Apa I siteの多型により両アレルが識別可能な症例は大腸癌119例中48例(40.3%)であり、IGF IIのLOIはそのうちの検索症例19例中10症例に認められた。今後さらに検討症例を加えると共に、背景粘膜のLOIについて検索する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Fumio Konishi: "CEA Doubling Time and CEA Half-life in the Prediction of Recurrences after Colorectal Cancer Surgery"Jpn J Clin Oncol. 41-42 (2002)
• [文献書誌] Taiji Furukawa, Fumiko Konishi: "Densely Methylated MLHI Promoter Correlates With Decreased mRNA Expression in Sporadic Colorectal Cancers"GENES, CHROMOSOMES & CANCER. 35. 1-10 (2002)
• [文献書誌] Kazuhisa Shitoh, Fumiko Konishi: "Microsatellite instability as a marker in predicting metachronous multiple colorectal carcinomas after surgery"Dis Colon Rectum. 45. 329-333 (2002)
• [文献書誌] Yasuyuki Miyakura, Fumio Konishi: "Concurrent Mutations of K-ras Oncogene at Codons 12 and 22 in Colon Cancer"Jpn J Clin Oncol. 32. 219-221 (2002)
• [文献書誌] 小西文雄: "大腸癌とマイクロサテライト不安定性"日本消化器病学会雑誌. 99. 1050-1056 (2002)
• [文献書誌] 甲斐敏弘, 小西文雄: "APC遺伝子"TECHNICAL TERM 消化管. 18-19 (2002)
• [文献書誌] 小西 文雄, 河村 裕: "テキスト 大腸癌"炎症性腸疾患と癌. 2(253) (2002)