研究概要 |
生体肝移植ドナー手術を腹腔鏡下に行なう目的で、切除区域から見た手術リスクの評価法を開発した。血中サイトカイン濃度の推移が、切除区域別に異なることが本年度の研究で明らかになった。 【目的】切除区域から見て肝移植ドナーの各種サイトカイン/血液データの変動を比較検討し、右葉グラフトのリスクを評価した. 【対象・方法】平成13年10月〜平成14年10月に肝移植ドナー手術を施行した18例について切除区域別に術前・術中・術後の血中の各種サイトカイン(HGF, IL-1ra, IL-6)変動を比較検討した.また,平成7年4月〜平成14年10月に肝移植ドナー手術を施行した59例を対象とし,切除区域別に術前・術後の各種血液データも比較検討した. 【結果】術後,HGFは右葉切除例と左葉(MHV+)+尾状葉切除例でピークの遅れと右葉切除例でのIL-1raの高値が認められた.右葉切除例はTBの高値が術後7日目まで遷延した.逆に,CRPは右葉切除例が他区域切除例に対し低値となった.また,右葉切除例はPLT・PTで低値をとり.外側区域切除例はGOT・GPTで高値をとった. 【結論】切除肝容量が大きいと,HGF値のピークの遅延,術後IL-1ra・TBの上昇,CRPの低値が認められた.少ない残肝容量がビリルビン代謝の遅延と急性相蛋白合成の低下をもたらした可能性が示唆された.右葉グラフトは臨床的には問題はないが,潜在的(subclinical)なリスクをドナーに及ぼす可能性があることが示された.
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