研究概要 |
1.Barrett食道の構造の検討 Barrett食道には食道扁平上皮に代わり不完全型腸上皮化生を伴う円柱上皮が粘膜固有層、粘膜筋板と共に存在している。その下には従来の食道粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下層と食道固有腺があり、食道固有筋層、食道外膜となる。それゆえ、表層の粘膜筋板をmm1、従来の粘膜筋板をmm2、mm1までを深達度m1、それ以深は従来通り粘膜固有層をm2、mm2をm3、粘膜下層をsm1、sm2、sm3とした。9施設95症例のBarrett食道癌の検討では、脈管侵襲はm3から、リンパ節転移はT1bから出現し、これらの深達度分類はBarrett食道癌病態を表すのに有用であった。臨床分類について食道癌の臨床病型分類を用いて検討してみたが、深達度、病態、予後と良く相関し、Barrett食道癌の分類は、食道癌の臨床病型分類を用いてよいと考えられた。 2.Barrett粘膜、Barrett食道癌の内視鏡診断 Barrett食道、Barrett食道癌の内視鏡診断には、通常観察とともに、メチレンブルー、インジゴカルミン染色のほか、拡大内視鏡観察が行われるが、確定診断はなかなか困難である。さらに癌の生検診断も分化型のものがほとんどを占めdysplasiaとされるものも少なくない。 3.Barrett食道癌の治療戦略の設定 Barrett食道癌の深達度とリンパ節転移および予後について検討してみると、癌が粘膜下層の中層より深く浸潤すると、急に悪性度が増すようである。表在癌では予後はむしろ良く、進行すると未分化型の癌が混在してきて急速に予後不良となる。以上のことよりBarrett食道癌の治療方針として、T1aの粘膜癌に対しては、Endoscopic Mucosal Resection(EMR),Photo dynamic therapy(PDT),Argon plasma coagulation(APC)を、T1bを越えた進行癌に対しては、外科的手術が必要である。Barrett食道の長さ、癌の存在部位、癌の進行度により術式が異なり、SSBEのsm癌にはtrans hiatal distal esophago-cardiac resectionを、下部食道の進行癌には左開胸開腹連続切開によるアプローチを、long Barrett'sには右開胸開腹連続切開、あるいは右開胸と開腹のseparateしたアプローチで頸胸腹部三領域リンパ節郭清のアプローチを行う。
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