研究概要 |
消化器癌において化学療法は外科療法、放射線療法とならび重要な治療法の一つである。口腔癌の転移先はほとんどが頚部リンパ節であるが、原発巣とリンパ節転移巣の薬剤感受性の相違も未だ明らかではない。そこで本研究課題において以下以下の結果を得た。 (1)シスプラチンおよび5-FU標的分子の食道癌、胃癌、大腸癌における発現の検討:シスプラチンの標的分子としてトランスポータであるATP7B (Copper-Transporting P-type Adenosine Triphosphatase)、MRP (Multidrug Resistance Protein)2、ヌクレオチド除去修復機構を構成するXPG, XPF,5-FUの標的分子である、TP (thymidine phosphorylase), DPD (dihydropyrimidine dehyregenase), TS (thymidylate synthesis)の発現をRT-PCR法および免疫染色法により検討した。いずれの標的分子も正常組織と比較して強発現していた。原発巣と比較して転移巣で発現が増強していた標的分子はTPおよびTSであった。 (2)遺伝子導入細胞マウス可移植性細胞を用いた、原発巣と転移巣における薬剤感受性に関する検討:上記標的分子を遺伝し導入した細胞を数種類作成し肺および肝転移に関して検討を行った。その結果、転移巣において、標的分子の発現の増強は認められなかった。 以上の結果より、原発巣の標的分子の発現より転移巣の発現を推測することは困難であり、実際の臨床においては、転移巣の標的分子のプロファイリングを詳細に行うことが重要であることが示唆された。
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