研究概要 |
目的:ブタ内分泌培養細胞の遺伝子情報を明らかにし、長期培養における培養細胞のインスリン分泌に関わる機能を検討した。 方法:インスリン遺伝子の発現と、インスリン発現に関わる重要な転写因子、たとえばPDX-1,Beta2/NeuroD, Pax6,Nkx6.などの発現について、reverse transcription-polymerase chain reactionによって検討した。インスリン蛋白の定量はELIZA法により測定した。培養は12週後まで観察を継続した。 結果:インスリン分泌は培養2週ごろから次第に低下し5週ごろには1週の半量近くまで低下がみられた。このような比較的早期からの分泌低下にたいして、インスリン遺伝子の発現および調節にかかわる転写因子の発現はかなりよく保持され、インスリンは12週まで、転写因子群は9週程度まで変わらず保持されていた。遺伝子発現のレベルそのものがインスリン蛋白分泌低下の直接の原因とはならないことが示唆される。さらにグルコース応答性や、高カリウム負荷に対する応答性は培養後期まで保持されているものの、次第にそのインスリン分泌反応性が低下してきた。 結語:我々のブタ膵内分泌細胞の培養系では、インスリン遺伝子およびislet-specific geneのmRNAの発現は少なくとも9週までは十分に維持されているにも関わらず、インスリン蛋白の分泌や、インスリン分泌刺激に対する反応性はこれに先行して次第に低下がみられた。
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