慢性便秘症、大腸憩室症などの機能性腸疾患では壁内神経系の調節異常が存在するということがわかってきたが、治療への臨床応用するまでには到っていないのが現状である。 そこで本研究では、日常臨床の現場で多く経験する慢性便秘症例について、その病態を生理学的に把握し、適切な治療方針を確立し臨床応用することを目的とした。 研究方法は、便通正常例4例、慢性便秘症例3例を対象として腸内圧測定用の3ch圧トランスジューサー付きカテーテル(P31-30:KONIGSBERG INSTRUMENTS.INC.製)(肛門管直上より2cm、12cm、27cmの部位で測定)を経肛門的に直腸からS状結腸に透視下に挿入し、記録用の携帯型3chポケットモニター(GMMS-300:スターメテ"ィカル社製)に接続し、S状結腸、直腸の内圧を連続的に長時間測定して検討を行った。 腸管運動を解析する方法は時間あたりの収縮波の数を検討し、さらに腸管運動をCodeらのI〜IV型に分類して解析した。 今回の検討では、経肛門的カテーテルにて、腸管内圧を測定することが可能であった。さらに、腸管運動の波形はCodeらのいうI〜IV型に分類することが可能であった。 便通正常例は慢性便秘症例に比べて波の数が多く、食後2〜4時間の波の数が増加する傾向にあった。さらに、I、II、IV型の波の増加を認めた。一方、慢性便秘症例では全体的に波の数が便通正常例に比べ少ないことより、腸管の運動性が低下していると考えられた。さらに、食後2〜4時間の波の数の増加を認めず、I〜IV型いずれの波の増加も認めなかった。以上より、便通正常例では食事により強い収縮波を伴う運動充進状態になると考えられ、それは胃大腸反射が関与すると思われた。また、慢性便秘症例では食事による胃大腸反射が障害されているということが示唆された。 現時点では症例数が少なく、さらなる症例の蓄積が必要と思われるが、本研究により、約7時間の経肛門的に腸管内圧を測定する方法、とくに、携帯型のポケットモニターを使用して測定する今回の方法は被験者の負担を少なくし、より自然な状態で記録でき、今後、慢性便秘症例からその他の機能性腸疾患の病態生理を調べる一つの方法として有用であると考えられた。 今後は、さらに24時間測定、伝達圧波形の詳細な分析、その他の消化管運動検査法を組み合わせての検討、直腸生検組織の検討を加えていけば、機能性腸疾患のより的確な治療法の開発につなげていけると考えられた。
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