研究概要 |
p53変異の異なる2種のヒト胃癌株MKN-45(低分化腺癌、p53 wild type)、TMK-1(低分化腺癌、p53 mutant type)をヌードマウスに移植し実験的化学療法を施行した。すなわち対照群(C群、n=24)、5'-dFUrd(82mg/kg)2週間経口投与(F群、n=16)、paclitaxel(20mg/kg)day1、8、15腹腔内投与(P群、n=16)、5'-dFUrd(82mg/kg)2週間経口投与+paclitaxelをday1、8、15腹腔内投与(FP群、n=16)、S-1(10mg/kg)2週間経口投与(S群、n=16)、S-1(10mg/kg)2週間経口投与+paclitaxel day1、8、15腹腔内投与(SP群、n=16)の6群に分類した。抗腫瘍効果の判定は推定腫瘍重量、相対腫瘍重量、T/C比を算定し行った。副作用の評価はRelative tumor free total body weight (RTFBW)により行った。化学療法終了後に腫瘍を摘出しhematoxylin eosin染色により組織学的変化を検討した。また各群におけるapoptosisの誘導を検討するため、TUNEL法ならびにcleaved cytokeratin 18免疫組織染色によりapoptosis indexを求め比較した。さらに5-FUの代謝・分解に関わるthymidine phosphorylase(TP)、thymidylate synthase(TS)、dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)、orotate phosphoribosyl transferase(OPRT)、uridine phosphorylase(UP)のmRNA発現をreal time RT-PCR法により検討した。 (1)フッ化ピリミジン系薬剤5'-dFUrd、S-1に対する感受性はMKN-45に比べTMK-1において高かった。(2)5'-dFUrd+paclitaxel併用投与群、S-1+pachtaxel併用投与群は単独群に比較し高い抗腫瘍効果を示した。(3)副作用の指標であるRTFBWは両腫瘍とも各治療群間に有意差は認めなかった。(4)TP、DPD、OPRT、UP mRNAはTMK-1において高発現、TS mRNAはMKN-45において高発現であった。(6)MKN-45,TMK-1のいずれの胃癌株においてもpaclitaxel投与後、TP mRNAが有意に増加しており、paclitaxelによるTPの誘導が確認された。またTMK-1においてpaclitaxel投与2日後をピークにTP mRNA発現が有意に高いことが確認された。(7)S-1投与群ではMKN-45,TMK-1のいずれの胃癌株においてもTP、DPDの発現が有意に(p<0.05)増加した。(8)TS、OPRT、UPは各治療群の間に有意差を認めず、規則的な変化はみられなかった。(9)cleaved CK18抗体による免疫染色、TUNEL法では、MKN-45・TMK-1とも対照群に比べpaclitaxel投与群においてapoptosis indexの有意な増加を認め(p<0.01)、paclitaxelによりapoptosisが誘導されることが確認された。またp53 wild type、mutant typeの両腫瘍において同等にapoptosisの誘導が確認された。
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