研究概要 |
細胞の性質は複雑なネットワークを介した多数の遺伝子によって規定されており,これら多数の遺伝子変化により癌の生物学的特性が生み出されていると考えられている。近年,多数の遺伝子変化を同時に捉え,総合的に解析するアプローチとしてcDNAアレイが導入され,遺伝子発現解析が飛躍的に進展しつつある。食道癌を対象としてcDNAアレイを行ったという報告は現在までのところ少ないが,切除後の化学療法の感受性を予後で判定することで,間接的に化学療法感受性に関与すると考えられる遺伝子群が報告されている。 当教室では2000年より患者に承諾を得たうえで,食道癌の切除標本の一部を切離し,超低温で保存を行ってきた。これまでに病理組織検査の結果が判明し,予後調査を行ってきた患者約50例についての腫瘍部と正常粘膜の標本を集積できた。それらのうちリンパ節転移を認めた群と無かった群各20例を用いてDNAアレイ解析を行いリンパ節転移に関与する遺伝子群を抽出し,ニューラルネットワーク解析法にて転移の有無の予測プログラムを作成する。この予測プログラムを用いてテストサンプル10例の予測率を測定したい。さらには症例数を重ね,たとえば表在癌で生検標本を使って転移の有無を予測するような臨床応用に用いたいと考えている。
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