研究概要 |
細胞の性質は複雑なネットワークを介した多数の遺伝子によって規定されており,これら多数の遺伝子変化により癌の生物学的特性が生み出されていると考えられている。近年,多数の遺伝子変化を同時に捉え,総合的に解析するアプローチとしてcDNAアレイが導入され,遺伝子発現解析が飛躍的に進展しつつある。食道癌を対象としてcDNAアレイを行ったという報告は現在までのところ少ないが,切除後の化学療法の感受性を予後で判定することで,間接的に化学療法感受性に関与すると考えられる遺伝子群が報告されている。 当教室では2000年より患者に承諾を得たうえで,食道癌の切除標本の一部を切離し,超低温で保存を行ってきた。これまでに病理組織検査の結果が判明し,予後調査を行ってきた患者の腫瘍部と正常粘膜の標本を集積し,それらのうちリンパ節転移を認めた群と無かった群を用いてDNAアレイ解析を行いリンパ節転移に関与する遺伝子群を抽出し,ニューラルネットワーク解析法にて転移の有無の予測プログラムを作成する予定であった。しかし,集積した切除標本よりRNAを抽出しDNAアレイ解析を行ったが,食道癌の外科的切除では他の消化器癌と違って開胸開腹の手術が必要なことから長時間を要し,標本から正確なRNAの情報を得ることが困難であった。そのため現在内視鏡による生検標本の集積を行っている。今後それらの生検標本を用いて予定していたDNAアレイの実験を行い,予後との関係について調査を行う。
|