研究課題
肝腫瘍の(偽)被膜の由来と被膜形成の要因(宿主側か腫瘍側か)、およびその形成のメカニズムについて、解明することを目的として、大腸癌肝転移巣を対象とし病理組織学的情報と遺伝子学的解析をあわせて行った。検討項目は、1)組織学的分化度、2)壊死の割合、3)肝内脈管および神経(門脈、胆管、神経)に対する侵襲の有無、4)癌部と非癌部間の線維組織(偽被膜)の発達の程度である。4.2002年9月から2004年11月までに40例(結腸癌肝転移26例、直腸癌肝転移14例)のうち33例について上記材料を集積した。組織RNAの回収は2005年4月に組織学的検索の結果から被膜発達程度により3つに分けたグループから5例ずつを抜き出して、total RNAの品質チェックを行った後にマイクロアレイ解析を行った。各群5例からのtotal RNAの品質はいずれも解析に十分なものと判定された。GeneSpringによる解析では、腫瘍部と非腫瘍部組織は明らかに異なったクラスタリングパタンを示したが、腫瘍部および非腫瘍部で被膜の厚い、薄い、なしの各群の比較ではほとんど同じパタンを示しうまくクラスタリングできなかった。d-Chipを用いた解析では腫瘍部と非腫瘍部で2通りずつのフィルタリング、クラスタリングをおこなったところ、腫瘍部では、被膜の厚い群となし群で47個の遺伝子が抽出された。一方、非癌部組織で同様の解析を行うと、いずれの方法でも5個の遺伝子が抽出された。大腸癌や胃癌の原発巣で観察される炎症細胞浸潤は宿主の腫瘍に対する反応を示しており、良好な予後との関連が報告されている。このような反応は腫瘍と非腫瘍部の境界にもっとも顕著である。大腸癌肝転移巣での病理組織学的検討では、腫瘍被膜は他の浸潤性因子(門脈侵襲)と関連があったが、予後に対する影響はそれらとは独立して見られることが報告されている。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
Int J Clin Oncol. 10(2)
ページ: 97-102
Surgery 137(4)
ページ: 396-402
World J Surg 29(4)
ページ: 524-527