研究概要 |
今年度は,マージナルドナーの肺を保存中に治療して改善を図ること目的として,冷却浸漬中に人工呼吸器による換気,薬物治療などができる設備として大型冷蔵庫を導入した.現時点では,イヌを用いた保存実験を開始する前段階として肺保存時と再灌流時の肺障害を抑制する薬剤としてGGAについてラットを用いて検討を行っている. マージナルドナーの肺利用の拡大を目指して,臨床肺移植において肺動脈からin situ perfusionを施行した後に肺グラフトの摘出を行い,摘出後にバックテーブルで肺静脈から逆行性灌流を追加している.これまで6例の脳死肺移植ドナーから肺を摘出して肺移植に利用した.脳死体内で肺動脈からの灌流後にバックテーブルで肺静脈から逆行性灌流を追加しているが,本法による灌流を行うことにより肺動脈からの血栓の流出がこれまで3例で観察された.しかし肺動脈に血栓の認められた例も逆行性の灌流を追加することにより,移植後の肺機能については血栓形成例との間に差を認めず良好な血液ガスが得られている.これらの血栓形成が認められたドナーは臓器提供まで,いずれも7日以上の人工呼吸器管理が行われていた.臓器提供まで長期の人工呼吸器管理歴のあるマージナル脳死ドナーを使用する場合は肺動脈の血栓形成についての評価と肺灌流の手法に注意が必要である. これらの臨床例の経験からマージナルドナーの肺を保存中に治療して改善を図る手法として,肺保存液及び血栓溶解を図る薬剤の投与を肺静脈から逆行性に灌流する手法を動物実験において検討してみたいと考えている.
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