研究概要 |
本研究では,肺高血圧における肺血管再構築には炎症反応が関与するとの我々の仮説を裏付ける所見が得られた。 1)肺高血圧における肺動脈中膜肥厚に炎症反応が関与する所見: モノクロタリン投与ラットでは,肺動脈中膜肥厚、非筋性肺小動脈筋性化の亢進を認め,RT-PCRとWestern blotting法を用いて、肺組織と肺動脈におけるTNF-αとIL-1βのmRNAおよびP38MAPKが対照群に比べると高値であることが示された。しかし、マクロファージの遊走には差を認めなかった。 2)P38MAPKの阻害により、炎症性サイトカインの発現が抑制され,中膜肥厚程度も抑制された:FR167653というP38MAPKの抑制剤を用いて検討した。モノクロタリン投与後1、2、3、4週めのラット肺組織中のcytokine(TNF-αとIL-1β)のmRNAとP38MAPKの元進が対照群に比し有意に抑制されていた。肺動脈中膜肥厚、筋性化率、肺高血圧も有意に軽減されていた。しかし、monocyte chemotactic protein (MCP)-1mRNAには差を認めなかった。 3)免疫染色による評価:肺組織におけるTNF-α、IL-1β、P38-MAPKの免染を検討した。モノクロタリン投与群では,TNF-α、IL-1β、P38-MAPKの発現が,対照群と比し有意に増加していた。P38-MAPKは,血管壁では内皮細胞の分に発現された。FR167653投与群を見ると、モノクロタリン投与群と比べて明らかに発現は軽度であった。以上より,肺高血圧の発症機序には炎症反応が大きく関与する事が示された。 4)成果の発表:以上の内容を論文にまとめてJournal of Thoracic and Cardiovascular Surgeryに投稿し、受理された。
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