研究概要 |
可変式肺動脈絞扼テープの開発 テープの内側にシリコンバルーンを装着し,バルーンにはシリコンチューブを連結して対側にリザーバーを接続した。テープの両端には小孔を設け縫合固定用とし、またX線不透過のマーカーを装着して留置後にX線透視下に位置確認ができるようにした。このテープを血管に巻き付け縫合固定し,リザーバー内に蒸留水を注入することでバルーンを膨張させ血管を絞扼できる構造とした。 動物実験 体重15〜20kgの成犬6頭を用いてペントバルビタール全身麻酔、気管内挿管、人工呼吸下に胸骨正中切開にて心臓に到達し、主肺動脈に可変式肺動脈絞扼テープを巻き付け固定した後、リザーバーから蒸留水を注入してバルーンを膨張させて肺動脈を絞扼した。リザーバー内への蒸留水注入量によって絞扼の程度を変化させ、主肺動脈に血管内超音波(IVUS)カテーテルを留置し絞扼部の形態を観察し、右室および続扼部末梢の肺動脈に留置したカテーテルを用いて絞扼部位の中枢および未梢の血圧を測定した。 結果:絞扼部圧較差(平均±標準偏差)はリザーバー注入量0.5ml:14.3±12.3mmHg、1.0ml:18.8±11.9mmHg、1.5mHg25.9±20.2mmHgで注入量の差による有意差は認めなかった。またIVUSによる形態検討では、絞扼部断面の長径/短径比は絞扼前:1.2±0.1、リザーバー注入量0.5ml:1.3±0.1、1.0ml:1.5±0.2、1.5ml:1.4±0.1で有意に楕円の度合いを増すが、肺動脈壁が局所に変形、突出する部分はなくほぼ均等に絞扼されると考えられた。 結論 バルーンの拡張により血管壁がほぼ均等に絞扼され、十分な効果が得られた。現段階で絞扼がどの程度の期間にわたって維持可能かまた、体内埋込み後に調節可能かについては不明であり、臨床応用の可能性を含めて更なる検討が必要である。
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