研究概要 |
【本年度の研究結果】Amyotrophic lateral sclerosis(ALS)は,進行性の神経変性疾患であり、有効な治療法は確立されていない。近年、グルタミン酸のexcitatory neurotoxicityとそのdownstream cascadeであるnitric oxide(NO)による運動神経細胞の障害が,ALSの病態発生に関係しているといわれる。グルタミン酸虚血下分節注入モデルを用いて,selective neuronal NO synthase inhibitor(n NOS inhibitor)である7-nitroindasole(7-NI)の脊髄保護作用をin vivoで評価した.New Zealand white rabbitを用い,A群,B群,C群に分けた.A群ではn NOS inhibitorである7-nitroindasole(7-NI)25mg/kgを腹腔内に投与した.B群では,non-selective NOS inhibitorであるN(G)-nitro-L-arginine methyl ester(L-NAME,25mg/kg)をA群と同様に投与した.C群は,vehicleのみを同様に投与した.カテーテルを大腿動脈から挿入、先端をbifurcationから5mm上の位置に固定した。開腹し、腹部大動脈を左腎静脈直下で遮断、カテーテルをbifurcationで外側から締め、血流を遮断した。30mMのグルタミン酸溶液を2ml/minの注入速度で5分間注入した。神経学的所見をTarlov scoreに従い、手術後、12、24、48時間後に、評価した。各群間の神経学的所見の比較は、Mann-Whitney U testで統計処理した。手術後、HE染色し光学顕微鏡で病理組織学的検索を行った。A群では,Tarlov scoreは、3.1±0.9,B群は2.2±0.8,C群は0.7±0.6とA群でB群,C群より有意に良好な回復を示した(p<0.05)。病理組織学的には、C群では、ventral hornの神経細胞の脱落が著明であったが、A群では軽度のeosinophilic changeのみであった。グルタミン酸虚血下分節注入による脊髄障害にたいして7-NIの保護効果が認められた。ALS治療へのn NOS inhibitorの応用が期待される.
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