研究概要 |
ラット肺全摘術モデルを作成し,残存肺でめ肺胞水分クリアランスを術当日,術後3日,1,2,4週目に測定した.その結果,肺胞水分クリアランスは術後1週間までは変化なく,2〜4週間で亢進した.術後血中カテコールアミンは上昇するが,クリアランス亢進には内因性のカテコーアミンの関与はなかった.亢進したクリアランス分画はアミロライド感受性であり,肺胞上皮細胞のナトリウムチャンネルmRNAの発現が亢進していた.また,分離した肺胞II型上皮細胞数が増加していた.テルブタリンは全ての測定日で肺胞水分クリアランスを亢進させた.この研究により肺切除術後の残存肺ではナトリウムチャンネルの機能亢進と肺胞II型上皮細胞の過形成により肺胞水分クリアランスが亢進していることが判明し,術後肺胞水腫の治療としてテルブタリンの有効性が示唆された. ヒト切除肺とラット肺でカテコールアミンの輸送能力を研究した.その結果,肺胞上皮細胞を介する肺胞からのカテコールアミン輸送能力はエピネフリンに比し,ノルエピネフリンの輸送能力がまさっていた.その輸送能力は肺胞水分クリアランスと相関し,ナトリウムチャンネル阻害薬のアミロライドとベンザミールにより抑制されるが,EIPAにては影響を受けなかった.また,ヒト肺とラット肺では両者とも同様の傾向が認められた.この研究では肺胞水分クリアランス機能の低下により肺胞内注入カテコールアミンの輸送能力は低下し,肺胞内濃度の減少は抑制されることが示唆された. ヒト切除肺における肺胞水分クリアランス亢進にCFTRが関与することを研究した.エピネフリンによりクリアランスは亢進し,CFTRのブロッカーであるグリベンクラミドにより亢進を抑制された.グリベンクラミド単独では肺胞水分クリアランスに影響を及ぼさなかった.この研究によりヒト肺におけるβ刺激薬の作用にはCFTRが重要な働きをすることが示唆された.
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