研究概要 |
<目的> 凍結保存同種血管において移植後内膜増殖をコントロールすることは,durabilityの改善に関与すると考える.bafilomycin A^1(BA1)とFK506を用いてその薬物的効果について長期生存実験モデルを用いて検討した. <方法> ACIまたはLEWISラットを用いて同種異系移植群(Homo),これにBA1を0.1mg/kg/day皮下投与した群(BA),或いはFK506を1mg/kg/day筋肉内投与した群(FK)及び同種同系移植群(Iso)を作成し,凍結保存血管の移植後14,30,90日後における内膜の増殖程度を内膜/中膜の面積比によって評価し,同様に外膜細胞浸潤の程度;拒絶反応の程度をスコア化により評価した. <結果> 内膜増殖はいずれの時期においてもHomoにおいて最も強く,それに対していずれの時期においてもBAにおいて有意(p<0.05)に抑制されていた.FKついては投与期間中は増殖抑制効果を認めたが,投与中止後有意な増殖を認めた.Isoにおいてはいずれの時期においても有意な増殖は認められなかった.統計学的にHomoに比べて有意に内膜増殖が抑制されたのは,いずれの時期においてBAのみであり,14日後のIso,FKのみであった.Isoはいずれの時期も細胞浸潤は強くなかったが,Homoは30日後をpeakにいずれの時期においても有意に強い細胞浸潤を認めた.またBAもいずれの時期において有意に強い細胞浸潤を認めたが,FKについては薬剤投与終了後の90日後に有意に強い細胞浸潤を認めた.細胞浸潤のスコア化において,統計学的にIsoに比べて有意に細胞浸潤が強かったのは,いずれの時期においてHomoとBAであり,FKの90日後も有意に強かった. <考案> 凍結保存血管移植後に免疫抑制剤或いは細胞増殖抑制剤を用いて内膜増殖をコントロールすることは,durabilityの改善に有用であることが示唆された.
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