研究概要 |
1996年から1998年に切除された非小細胞肺癌241例を用いた.パラフィンブロックから4つの領域(正常組織1ヶ所、腫瘍組織3ヶ所)を選択し、直径0.6mmの領域をボーリングして、tissue microarrayの作成を完了した。本年度はこれまでにいずれも予後との関連が報告されている腫瘍抑制遺伝子p53、RB、p27癌遺伝子Bcl2、EGFR、神経内分泌マーカーsynaptophysin (SP), CD56およびサーファクタント転写因子であるTTF-1の計8分子について解析を行った。 まずこれらの遺伝子の発現について、腫瘍全体を検索した場合とほぼ同様の検出率をもって解析可能であることを検証した。それぞれの遺伝子の発現率はp53 57%, RB 15%, p27 84%, Bc12 26%, EGFR SP 2%, CD56 1.3%, TTF1 58%であった。腺癌を中心とする非扁平上皮癌と扁平上皮癌に発現率の有意な差を認めたものは、RB(非扁平上皮12%、扁25%、P<0.0188)、EGFR(非扁87%、扁65%、P<0.0003)、TTF-1(非扁74%、扁1.5%、P<0.0001)の3遺伝子であった。 次にそれぞれの遺伝子の発現と予後の関連をlog-rank testによって解析した。有意差検定におけるP値はp53 0.4425,RB 0.2209,p27 0.5946,Bc12 0.9587,EGFR 0.1391,SP 0.9971,CD56 0.8195,TTF1 0.0588とTTF-1陽性例がわずかに予後良好の傾向を示したに過ぎなかった。 Tissue micorarrayを使用することで多くのサンプルを短時間で、かつ同一の条件で処理することが可能であった.本年の解析では臨床的に有用と思われる遺伝子は見いだせなかったが、今後も解析対象分子を増やして肺癌の臨床像の包括的な理解を進めていく予定である。
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