研究概要 |
1995-2000年の間にgliomaと診断された50例につき病理所見の再検討を行なったところ一部で初回診断とは異なった結果が得られた。glioblastoma10例、anaplastic ependymoma2例、anaplastic astrocytoma9例、anaplastic oligodendroglioma6例、oligodendroglioma/oligoastrocytoma7例、diffuse astrocytoma5例、pilocytica strocytoma11例であったが,中でも,anaplastic oligodendroglioma6例のうち、2例では初回診断はglioblastomaであった。このように、光顕による病理診断は、必ずしも普遍性を有しておらず問題点があり,確実なgliomaの病理診断を下すための腫瘍マーカーを確立することも重要であると思われた。特に,化学療法への高感受性が知られているoligodendrogliomaを識別するためのマーカーの研究を試みた。OLIG geneは近年cloningされた転写因子で、発生段階でneural progenitor cellからoligodendrocyteの分化を誘導する。oligodendrogliomaで、発現が高くなっているとの報告はあるものの、glioma全般に渡っては検討されておらず、腫瘍マーカーとして有用であるかの検討が必要であると考えられた。そこで、上記の症例につき、OLIGmRNAの発現レベルを半定量的RT-PCR法にて検討を行なった。結果、oligodendrogliomaでの発現は高いものの、astrocytic tumorでも発現は亢進していた。抗体を作成し、蛋白レベルでの発現も検討したが、類似の結果であった。しかし、免疫組織学的な検討では、oligodendrogliomaのほぼ全例で90%以上の腫瘍細胞が陽性となり、他の腫瘍と比べて極めて高い陽性率を呈した。この結果から、OLIGの免疫染色によりoligodendrogliomaを他のgliomaから鑑別することが可能となった。今後は薬剤耐性遺伝子の発現につき、同症例の検体を用いて検討していく予定である。また、マイクロサテライトマーカーによる1P,19qのloss of heterozygosity(LOH)の解析を7症例について行なうことができた。しかし、悪性グリオーマの患者では死亡症例も少なくなく、全例からのreference用の血液採取は不可能であった。LOHを簡便に検出するために、fluorescence in situ hybridization法を用い、bacterial artificial chromosomeよりprobeを作成し、パラフィン切片上でLOHの検出法を確立した。今後はこれら2つの方法のいずれかを用いて、glial tumorでの遺伝子異常の検出をさらに症例を重ねて検討していく予定である。
|