今年度は、昨年度に引き続き健常者を対象に脳磁図、fMRIによる言語機能マッピング法の総合的解析を行うとともに、脳腫瘍症例について脳磁図、PET、fMRIを用いて脳賦活測定による運動性言語野の局在、機能障害の程度を測定し、病変および周辺脳機能の3次元的解析を行った。対象はグリオーマ症例6例で、全例とも左前頭葉Broca野近傍に腫瘍は局在していた。言語タスクはverb generation taskを用い、視覚および聴覚言語提示間隔を6秒として→1分間休止→1分間言語提示および想起を4セット行った。6例全例において、左中前頭回(4例)ないし下前頭回(2例)にBroca野と推定される賦活領域が認められた。腫瘍と賦活領域が極めて接近していた1例では硬膜下電極を設置し、電気刺激による言語機能マッピングを追加した。これらの計測結果を基に、ニューロナビゲーションシステムを用いて摘出術を行った。術前より言語障害が出現していた3例はいずれも術後に症状は改善した。術前に言語障害を呈していなかった3例中2例は術後も無症状であった。1例が一過性の運動性失語を呈したが、約10日間で症状は消失した。術後にも術前と同様の言語機能マッピングを施行したが、全例でBroca野は温存されていることが客観的に示された。術前の言語機能の測定は手術適応、摘出範囲の決定など最適な治療計画の設定や手術侵襲の程度の把握に極めて有用であった。今後さらに症例を蓄積して、マルチモダリティによる言語機能測定の有用性を明らかにして行きたい。
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